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熱中症と安全配慮義務

夏のBCPといえば台風や大雨が注目されがちですが、熱中症対策も忘れずに実施する必要があります。

本記事では、企業が熱中症対策を行うべき理由と怠った場合の法的リスクについてわかりやすく記載しています。

この記事の目次[非表示]

  1. 1.熱中症とは
  2. 2.熱中症が起こりやすい場所
  3. 3.熱中症が起こりやすい業種
  4. 4.熱中症と安全配慮義務の関係
  5. 5.厚生労働省による熱中症予防対策の通達
  6. 6.実際の判例
  7. 7.安全配慮義務違反の判断基準
  8. 8.企業における熱中症事故のリスク
  9. 9.もしも従業員が熱中症になったら
  10. 10.最後に

熱中症とは

熱中症とは、体温の上昇、体内の水分・塩分バランスの崩れ、体温の調節機能が上手く働かなくなり、めまい、けいれん、頭痛などさまざまな症状を起こす状態のことです。

〈熱中症の主な症状など〉

熱中症の重症度
主な症状
必要な対応
Ⅰ度
手足の痺れ、めまい、
立ちくらみ、こむら返り
・直ちに涼しい場所に移動させる
・体を冷やして水分や塩分を補給する
・改善しない場合は病院へ搬送する
Ⅱ度
頭痛、吐き気、倦怠感、虚脱感
自分で水分や塩分を摂れない場合は、
速やかに病院へ搬送する
Ⅲ度
意識障害、痙攣、体が熱い
直ちに病院へ搬送する


熱中症が起こりやすい場所

熱中症は、屋外などの直射日光が当たる場所に限らず、工場や作業場などの屋内で起こることも少なくありません。

また、まだ体が暑さに慣れていない時期に発生することも多く、注意が必要です。

具体的に熱中症が起こりやすい場所と、それぞれの対応策については、下記の通りです。

  • 日差しが強い場所:日陰を作る、昼間の炎天下になる時間帯を避けて作業する等
  • 風通しが悪い場所:大型ファン等を利用して気流をつくる等
  • 照り返しが強い場所:日差しが強くない時間帯に打ち水を行う等
    ※炎天下の中で打ち水を行うと、逆に蒸し暑くなるため、注意が必要です。


熱中症が起こりやすい業種

職場で熱中症になった人数が多い業界TOP3は、以下の通りです。

  1. 建設業
  2. 製造業
  3. 運送業

上記のような業界では、重量物を運んだり、休憩場所が少し離れているような現場で作業したり、交代要員が居らず持ち場から離れづらい状態などが予想されます。

熱中症警戒アラートが発表されているような状況下では、普段よりも交代人員を増員したり、休憩場所までの移動時間を考慮した休憩時間を設定する等の工夫をする必要があります。


熱中症と安全配慮義務の関係

「大人なんだから熱中症ぐらい従業員側で対策できるだろう」という考えは許されません。

労働基準法施行規則第35条で労災の対象となる疾病が定められていますが、その中に「暑熱な場所における業務による熱中症」と規定されています。

また、厚生労働省の通達によると「体温調節機能が阻害されるような温度の高い場所」での業務中に熱中症を発症すると労災に認定されます。


厚生労働省による熱中症予防対策の通達

厚生労働省は通達の中で「暑さ指数」を活用することを呼び掛けています。

他にも①作業環境管理、②作業管理、③健康管理、④労働衛生教育、⑤救急処置などの措置を取るべきとしています。

これらの対策を怠っている企業において従業員が熱中症事故に遭った場合、安全配慮義務違反になるおそれもあるため注意が必要です。

参考:厚生労働省「職場における熱中症の予防について」


実際の判例

〈平成28年1月21日に出された大阪高等裁判所の判決〉

造園業者で働く男性が、真夏の炎天下に剪定作業を行っていたところ、熱中症により死亡した事案につき、慰謝料2,500万円と逸失利益1,680万円を認定し、最終的には企業側へ約3,600万円の賠償責任を命じました。

※逸失利益とは、熱中症で死亡しなければ得られたであろう将来の収入のことです。


安全配慮義務違反の判断基準

法律上は下記3点が大きな基準となります。

  1. 危険な事態や被害の可能性を事前に予見できたかどうか(予見可能性)
  2. 予見できた損害を回避できたかどうか(結果回避性)
  3. 使用者側の安全配慮義務が欠けていたことにより労働者が負傷等したといえるか(因果関係)

具体的には、熱中症が疑われる場合には、適切に休憩をとらせ、回復しない場合は早急に救急車を呼ぶ等の対応が求められます。

また、労災認定と安全配慮義務違反はイコールではありません。労災申請すると会社にとってマイナスになるのでは?と不安になる必要はありませんので、安心して申請してください。


企業における熱中症事故のリスク

慰謝料はもちろん、事故により現場がストップ、労働災害防止計画の見直し、メディアへの対応、社会的信用の失墜など様々な損失が予想されます。

何よりも、大切な従業員を失うことは一番大きな損失といえます。

従業員ひとりひとりの健康を守るために、熱中症警戒アラートなどをしっかり活用しましょう!


もしも従業員が熱中症になったら

従業員の様子が少しでもおかしいと感じたら直ぐに119番。全身に水をかけ、体温を急速に冷ますことも大事です。なお、うちわや扇風機などがあれば、水をかける+風を送ることで、より急速冷却することが出来ます。

体調が悪くなった人を涼しい部屋に一人で休ませる場合もあるかと思います。「涼しい部屋で休ませているので大丈夫だろう」と思っていると、しばらくして様子を見に行ったときにはぐったりしているケースも少なくありません。

体調が悪い人には必ず誰かが付き添い、早めに医療機関に連れて行く等の対応を心がけましょう。


最後に

従業員の安全管理などを担当されている方は、「熱中症警戒アラート」のチェックも重要です。

熱中症警戒アラートについては、「熱中症警戒アラートとは」にて別途解説しています。

ぜひ上記記事も併せてご覧ください。

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